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執筆者の写真S Mikaze

野宮神社

境内に入るより先に、大勢の若者が集うのを見た

唐草や花模様のそれは互いに顔を合わせ

嬉しそうに笑ったりはしゃいだり

まるで私の入る隙間はない

進学の祈願だろうか、それとも片思いの終わりを願うのか

ともかくその浴衣姿が様になっていて

時代を超えた建造物の中にぴったりと収まり

ひとつの絵画のようになっているのだ


持ち合わせていた鮮やかな桃色の傘も

もはやその迫力に勝機はなく

私は遠くからその賑やかさを傍観した

此処に立ち止まり、それまで歩きながら考えていた願い事は

すっかり頭から消えてしまった


大したことのない願い事は 遠くで響く鐘の音に届くわけもなく

彼らの威勢の良さを瞳の奥にしまって

その場を去ることにした


掌に握りしめていた 行き場のない賽銭で

団子のひとつでも買って行こうじゃないか





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