反対側の世界で
ぼくらは見ている
歪んだ鏡の中で
空気を肌で感じられる世界に
密かな憧れを抱いている
何かの走り去る音が聞こえた
何かの過ぎ去る感情が震えた
通りかかったあの子の目線で
街をスキップしてみたかった
変な形の物体が空を飛んでいた
それよりもっと高く翼を広げて
街を見下ろしてみたかった
届かないと分かっていながら
手を伸ばすことが大層可笑しかった
電柱が突き刺さっていて
ばくらの世界にも雲があって
それでも決して交わらない世界で生きている
ヒーローのように守るべきものがなければ
いつも心は強くいられるはずなのに
ひとりで頑張るのが馬鹿みたいで
どうしようもなく寂しかった
だから目を背けることができない
まわる身体に身を委ねて
逆さまになっても正気を保って
泡が先に行ってしまうのを見送った
今日も彼らを映し出そう
無常の空はここにある
ぼくらはどこにも行かないから
ここで見守るだけだから
どうかその愛を壊さないで
欠片を落として傷つけないで
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