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庭園

  • 執筆者の写真: S Mikaze
    S Mikaze
  • 2022年6月21日
  • 読了時間: 1分

鮮やかな緑は梅雨の訪れを密かに告げた

音は静かに柔らかな絨毯に染み込んでいく

植物たちはそこに共存し

主人の眺めたであろうその美しさを保っている


私は禁断の果実に触れるように

その庭園に踏み込む時に息を潜めたが

誰もいないその空間に

一人でそれらを見渡し、ただ足音を立てないよう

ゆっくりと徘徊するのが精一杯


見えない草むらに蛙の声が聞こえてきて

返事をするように頭上の鳥が綺麗な声を響かせた

庭の奥にオレンジ色の明かりのついた小屋があり

その屋根の先から

ぽた、

ぽたり

ゆっくりと雫が落ちていく


気がつけば二、三枚と紅葉の葉が肩に落ちていて

私は我に返ってその場を去った

雨音を置き去りにはできなかった




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