S Mikaze2022年5月18日読了時間: 1分帰り道思いの外 夜の世界はすっきり 辺りの家々は点々と 大通りには街灯がぽつぽつ 隅々まで妖しい空気が行き渡り 月明かりに照らされた私の肌は 心踊らせ白く透き通る 五月蝿いものはすべて脱ぎ捨てた 丸裸のまま湯船から足を上げ 窓の向こうへ行きたいと願った記憶が 目の前を横切った...
S Mikaze2022年5月8日読了時間: 1分弾き語りありがとう というフレーズが 街の中心近くで聴こえてきた ありきたりな言葉だと感じても 咄嗟にその考えはかき消された 彼の言葉に耳を傾ける者は多くはないが 一瞬発信地を見据える者は数知れず 歌声は 大勢の通り過ぎる場所で その言葉が隙間をぬって 心の内側に微かに響く...
S Mikaze2022年5月6日読了時間: 1分街影人通りから離れた川岸で 鳥は置物のように静止して じっと羽を休めている 誰の目にも留まらないその姿が 風景に一体化して溶け込んでいる 街中に入り込んだ楽園は 知らないうちに側でひっそり息を潜め 生命を内側に宿していた それは賑わう商店街や 雑踏の中にそびえ立つビル群よりも...
S Mikaze2022年5月5日読了時間: 1分ヘーゼルナッツラテとバナナウォルナッツケーキ死者とロボットは羨ましがるが 別に気にしなくていい 誰も咎めやしない 明日がやってくるなんて誰にも分からないんだし 口にするのがもったいない? そんなことは気にしなくていい もう五感はとっくに研ぎ澄まされているし 身体は喜んで虫みたいに光っている 口にしたら罪なんて...
S Mikaze2022年5月3日読了時間: 1分フレーム広い芝生が地平線を覆っていて ニョキニョキとキノコのように 草木や建物が生えている 生えていない生き物たちは 散々にその上を渡り たいそうご機嫌である かくいう私も 平和の箱からそれを眺めてご満悦だ 時間という妙な制限は ここには存在しないらしい...
S Mikaze2022年5月1日読了時間: 1分発見何十億年先の 我々のいなくなった頃 目の前にある光景は同じ姿形をしているだろうか それらは原型をとどめているだろうか どんなものに生まれ変わっても愛せるものはあるだろうか 例えば、小さい頃の楽しい思い出の詰まった公園は 大人になった自分には あまりにも小さな場所だった...
S Mikaze2022年4月30日読了時間: 1分遭遇織りなす色は繊細に紡がれ 瞳にその彩りを描いて残す 鮮明な配色は、森が得意な光の粒 言葉にできない色たちが 緑の枠を超えて集う 水面に映るは、絵筆を落として染み込んだ空想の世界 釣り人はそこに糸を垂らし、沈黙の中を彷徨う 心は水面のように揺れて...
S Mikaze2022年4月28日読了時間: 1分窓辺お気に入りのサボテン 砂浜で拾った綺麗な石 石 石 ちいさなものを並べると ちいさな幸せを感じられた 外は柔らかい光を内側に届ける 私はそっと目を開けて その温もりに肌をうずめた 何も無かったかのような顔をして 窓の向こうの花は微笑む 小鳥のさえずりは心地よい子守唄のよう...
S Mikaze2022年4月27日読了時間: 1分旅路島の先端には 揺れ動く地面に一心に根を張らせた奴がいる ねじ曲がった回路を断たれまいと あらぬ方角を向いている 頭上から人間達を眺め 遠方に広がる地平線を横目に 決して後戻りはしないと踏ん張っている 私はそこに立ち向かえるか? 抗う時の傍観者に成り得るか?...
S Mikaze2022年4月26日読了時間: 1分おとしもの中身はわからない でもきっと 誰かが落とした宝物 また明日、とか さようなら、とか 何も告げずに詰め込んだもの 価値のないもの でもそれはきっと嘘 どこまでも流されて 押し戻されて 目の前に現れた出会いなのだ どれだけ愛しいものだろう 不思議な、けれども愉快なおとしもの...
S Mikaze2022年4月19日読了時間: 1分青見上げれば その青は世界を突き抜けていて 丸いレンズを透過するみたいに 地球は丸く 私の周りをすっぽりと覆い尽くしていた 歴史の一部が囁きかける 先人もこの空を見ていた 未来に思いを馳せながら ありふれた今から、顔を覗かせて 白いもこもこはゆっくりと時を動かし...
S Mikaze2022年4月13日読了時間: 1分森とわたしと染み込んでいく 緑の静けさ 水の流れが 心を踊らせ わたしは偉大ないのちの息吹を 体に浸透させている 足取りは軽く ひとりでに歌を口ずさむ ああ、なんてしっかり生きている ああ、これ以上の安らぎはなく これ以上の喜びはなく しかし 言葉にできた歌はひとつだけ...